1.前列腺がんとは
前立腺は男性にだけにある臓器で、ここで精液の一部を作っています。前立腺ガンは50歳以上の人に多く発病しますが、欧米に比べると日本では少ないガンとされています。しかし高齢化が進み、確実にその数は増えるであろうと考えられているようです。
近年、発症の原因の一つとして遺伝子の異常がいわれていますが、なぜガン化するのかはまだ十分に解明されていないようです。そのほか、脂肪分の多い肉類の食べ過ぎ、緑黄色野菜不足、アルコール度数の強い酒の多量摂取なども挙げられています。また高齢者に多いことから、ホルモンのバランスが不均衡になるためともいわれています。前立腺ガンはリンパ節と骨に転移しやすいといわれています。
前立腺ガンはほとんどが前立腺の中の腺細胞がガン化したものであり、大半が男性ホルモンにより進行が早まるという特徴をもっています。そのため、男性ホルモンの作用を抑えることによりガンの増殖を止め、ガン細胞の一部を死滅させることができるようです。また、ほかのガンと同様に、早期発見が治癒につながります。
2.症状
前立腺が尿道を囲むように存在しているため、前立腺がんが発生するとその増殖により尿道が圧迫されてさまざまな症状がみられるようになります。症状としては、排尿困難(尿が出にくい)、頻尿(尿の回数が多い)、残尿感(排尿後、尿が残った感じがする)、夜間多尿、尿意切迫(尿意を感じるとトイレに行くまでに排尿を我慢できない状態)、下腹部不快感などがあげられます。がんの大きさが尿道を圧迫するほど増大していなければ、無症状のことが多くあります。がんが尿道を強く圧迫するようになると排尿困難が悪化し、尿が出なくなる状態(尿閉)となってしまいます。がんが尿道または隣接する膀胱内に進展した時は、その部位より出血し、肉眼的血尿がみられることがあります。膀胱にがんが進むと、膀胱刺激症状が強くなり尿失禁状態になります。また、尿管が閉塞状態になると腎臓でつくられた尿が膀胱まで流れず、腎臓にたまって水腎症になり背部痛がみられることもあります。また、前立腺がんは進行するとリンパ節や骨に転移しやすいため、それに伴った症状がみられるようになります。体表に存在するリンパ節に転移した場合には、その部位の腫脹(しゅちょう)や疼痛がみられます。骨に転移した場合には、その部位の痛みを生じることがあり、転移部位の骨が弱くなった時は、骨折することもあります。骨転移しやすい部位は骨盤骨と腰椎、胸椎があげられます。骨転移が広範囲に拡がると、骨髄から血液を造ることが困難となるため貧血になり、さらに進行すると血液の中の止血する成分が不足して、消化管出血などが生じることがあります。
3.診断法
前立腺がんの診断で最も簡便で従来より行われている方法には、直腸指診があります。これは、肛門から直腸の中に指を入れて、前立腺の状態を調べる検査です。指の感覚により、前立腺表面の不整の有無、かたさ、周囲との境界、痛みの有無などを検査します。前立腺がんの初期の段階では、腫瘤として前立腺内に触診できます。がんが進行していくと前立腺全体がかたく、表面が不整になり、さらに進行すると前立腺と周囲との境界が不明瞭になります。炎症がなければ、多くは痛みがありません。
直腸指診とならんで重要な検査は、血液中の前立腺特異抗原(PSA)の測定と経直腸的な超音波検査です。PSAは、鋭敏に前立腺がんの存在を検出できる血液検査です。がんの進行とともにPSA値も上昇し、病期までも予測することができます。しかし、PSAは前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇することがしばしばあります。超音波検査は、肛門より超音波の機械を入れて直腸を通して前立腺の状態を調べます。正常の時は前立腺は左右対称であり、前立腺内の各領域の境界が判別できます。がんになりますとその多くは正常部位と異なる像がみられ、左右不対称や各領域が不鮮明になることが多く見受けられます。さらに進行した場合には、前立腺と周囲組織との境界が不鮮明になり、周囲への浸潤(しんじゅん:がんが周囲へ拡がること)が疑われます。
これら3つの方法により前立腺がんの疑いは診断できますが、確定診断となりますと、穿刺吸引生検法や経直腸または経会陰的針生検にて前立腺の組織を採取し、顕微鏡で検査する組織診断をしなければいけません。
前立腺がんと診断した後は、がんがどこまで拡がっているかを調べます。これが病期の診断です。前立腺内および周囲への進展は経直腸的超音波検査の他に、腹部、骨盤部をコンピューターを使ったCTやMRI検査で調べます。前立腺がんの転移部位として最も多いのは骨です。骨転移を調べるために骨シンチグラムと骨の単純X線撮影があります。骨シンチグラムというのは、骨転移巣に集積する放射性物質を注射し、全身の骨を調べる検査です。また、がんが骨に転移すると骨が破壊され、血中のアルカリホスファターゼが高くなります。リンパ節転移や肺、肝などの遠隔転移は、CTやMRI検査により調べます。
前立腺が尿道を囲んでいるため、尿の通り道におよぼす影響を調べる必要があります。そのため、尿道造影や腎盂造影などの検査を行います。尿道造影は尿道口から造影剤を入れて、尿道から膀胱の状態を調べます。腎盂造影は、血管内に造影剤を入れて、腎臓から排出される造影剤の流れを経時的にX線撮影し、腎臓、尿管および膀胱の状態を調べます。
4.治療法
医師は、がんのある場所と病期や年齢、今までの病気や一般状態に基づいて治療の方法を計画します。前立腺がんの治療法として、ホルモン療法、外科療法、放射線療法、化学療法の4種類があります。
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